“あかまる牛肉店が綴る、お肉にまつわるはなし”

あかまる牛肉店も「地域内循環農業」のひとつの歯車

お肉のこと

 

あかまる牛肉店代表の鳥飼です。

弊社で常時取り扱っている鳥取和牛は、「鳥飼畜産」という畜産農家の牛肉がメインとなっています。

これは私の実家であり、5年前にあかまる牛肉店を設立しようと思い立ったきっかけでもあります。 

今回は、鳥飼畜産のある鳥取県倉吉市関金町の畜産、農業における「地域内循環」についてお話します。

 

鳥飼牛の始まりと変遷

鳥飼畜産は、昭和47年頃、私の父である鳥飼修が18歳の頃にはじめた事業です。

父・鳥飼修

当初は梨農家である祖父・順二の跡を継ぐように考えていた父ですが、

「自分に梨づくりは合わない」と思ったらしく、また祖父からも「お前は別の仕事をやりなさい」と言われたらしく、

当時、中間所得層による購買が伸びていた食肉の生産をしようと取り組みはじめました。 

 

はじめは子牛の段階のメス牛を買ってきて種を付け、妊娠が確認できた頃に市場に出すという、『初妊牛の育成』をしていたといいます。

やがて肉用種である交雑牛(黒毛和種とホルスタインの雑種)を育てるようになり、平成に入ってからは黒毛和牛が増えていきました。

平成10年頃には全体で200頭あまりの規模となり、すべての牛が黒毛和牛となりました。 

 

 

大量に必要なエサとその種類

牛は体が大きく、また成長が早いため多くのえさを必要とします。

穀物が主原料となる濃厚飼料(配合飼料)と、

草が主体となる粗飼料の2種類を目的に応じて与えます。

肥育牛(肉として育てられ通常は生後28か月齢程度で出荷)は濃厚飼料のほうが多く、

繁殖牛(母牛として種付けされ子牛を生産)は粗飼料のほうが多くなります。

 

反芻動物(はんすうどうぶつ)である牛にとっての好物は、食物繊維の強い草です。

このため、日本では昔から牛に稲わらをえさとして与えてきました。 

 

稲わらに栄養はほとんどありません。

4つの胃袋の中で、牛は第1胃から第3胃まで食べ物を行き来させる(反芻させる)中で第1胃では食物の発酵を促します。

稲わらは繊維が強いこともあって、咀嚼の際に発生する唾液の分泌量が増えることや、第1胃内では発酵抑制したりph正常な数値に近づけるなど、牛の身体にとって良い作用がたくさんあるのです。 

 

鳥飼畜産には、現在230頭の牛がいます。肥育120頭、繁殖70頭、育成40頭で、このうち稲わらをよく食べるのは肥育・繁殖です。

食べる様子を見ていて、特に思うのは繁殖牛の旺盛な食欲。

群れで飼っているために、えさやりのときには我先にと縄張り争いも激しくなります。 

 

もちろん稲わらだけでは入手できる量に限りがありますので、近隣の田畑で作った牧草なども与えています。

鳥飼畜産、鳥取和牛のエサの牧草イタリアンライグラスストロー

イタリアンライグラスストロー

 

ちなみに、牧草はビタミンなどの栄養素も摂取できるイタリアンライグラスという品種を与えています 

  

 

稲作農家と畜産農家をつなぐ地域内循環とは 

 

鳥飼畜産のある鳥取県倉吉市関金町には、多くの稲作農家があります。

今では専業農家・兼業農家ともに戸数が減り、専業の1農家が規模を拡大する中で耕作放棄の田んぼを請け負う形も増えてきました。 

こうして近隣の米農家が作った稲わらを、鳥飼畜産が秋の稲刈りシーズンに引き取りにいきます。

 

和牛農家の仕事は年中それほど変化がないと思われていますが、

鳥飼畜産では、9月から11月までの収穫シーズンが1年で1番忙しい期となります。

ここで牛に1年間与えるえさのほとんどを確保しなければいけないからです。 

 

また、牛は大量にえさを食べることから、排せつ物も大量です。

この牛糞については、専用の堆肥舎でメタンガスやアンモニアを飛ばし、農作物に与えても問題のない状態にまで発酵・乾燥させます。

この牛糞は堆肥として春の田んぼを耕すシーズンに、稲わらをいただいている農家さんのところに配って回ります。 

えさである稲わらと、米の肥料となる堆肥が1年の間に循環するわけです 

 

あかまる牛肉店が目指す循環 

お手軽BESTMEETコース3980円

あかまる牛肉店では、この米農家さんが作ったお米を弊社の焼肉店で炊き、白ごはんで提供しています。 

 

今後、酒米を作っている農家さんの稲わらをえさに導入し、またその米を使って造る日本酒も焼肉店でご提供したいと考えています。

酒造りで出てくる酒粕は、現状では産業廃棄物として捨てられています。

これを牛に与えることで牛の健康状態が良くなるのであれば、積極的にえさに利用していけるように考えています(今はまだ実験中です)。 

 

鳥取県倉吉市関金町の小さな地域ではありますが、こうした循環が、数十年という単位で綿々と受け継がれてきました。

気候変動や環境問題を考えるとき、畜産農家にとっての“えさ”と“堆肥”は今後、もっと重要になってくるのではないかと思っています。

米農家さん生産量を維持していただくためにも、稲作農家の後継者づくりをしていかなければなりません。後継者づくりは畜産農家のほうも同様です 

 

あかまる牛肉店は、それぞれの出口としての肉屋であり焼肉店であるわけですが、

私も農家を背景に生まれ育ったからには、地域の将来のためにできることは何でもお手伝いしていきたいと考えているところです。 

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