「無添加和牛ベーコン」を共同で開発している、スモークハウス白南風(しらはえ)さんを訪問いたしました。
ここでは保存料、発色剤、化学調味料 無しの燻製を製造されています。その背景にある職人さんの思いを探っていきました。
1. 無添加燻製工房・スモークハウス白南風(しらはえ)を訪ねて
2. 食べたことのない美味『無添加 和牛ベーコン』の誕生
3. 「木の命をいただく責任」燻製職人の青木さんのこだわり
4. 人の手を介して何重にも旨味を増していく肉とは
無添加燻製工房・スモークハウス白南風(しらはえ)を訪ねて

スモークハウス白南風(しらはえ)
出雲大社がある島根県大社町の民家の中(ぶどう畑のとなり)に紛れ込むように建っている肉加工工場。
「ぶどう畑の中にうちがあって、そこから今みたいに周りに家が増えていったのよ。でも、風呂を焚いている家がまだたくさんあるから、匂いのことは特に言われないの。」と奥様。

保存料、発色剤、化学調味料 無しの様々な燻製が作られている
塩とコショウだけで造る肉の加工品が、どのように作られていくのか・・・
取引がはじまって約2年。お恥ずかしながら、これまでは電話でのやり取りのみでした。
過去に共同で作ってきたのは『鳥取和牛セミドライソーセージ』です。

鳥取和牛セミドライソーセージ。スモークハウス白南風(しらはえ)で製造していただいた。
食べたことのない美味『無添加 和牛ベーコン』の誕生
今回、初めて工房を訪れるきっかけとなったのが、『無添加 和牛ベーコン』です。
弊社には和牛ベーコンという商品があります。
この商品ができたのが2015年ですから、すでに5年ほど経っています。その間に、徐々に良い部位を使い、少しずつ商品のブラッシュアップを図ってきました。
この商品は、国内でも他の追随を許さない、誰も真似できない商品(真似したくないというか、真似しようとも思わないというか・・・)になってきていると自負しています。
この無添加の和牛ベーコンは、2018年の年末に一度試作をしてもらっています。いつか、この商品を市場に出したいと心に秘めていたところ、東京を中心に展開されているスーパー『紀ノ国屋』さんのバイヤーの目に留まりました。
ある商談会でお会いし、お話した時に、紀ノ国屋さんで扱っているオリジナルのジャーキーについての話になりました。
「うちはこだわりの食材、食品を謳っていながら、お恥ずかしいことに弊社の扱っているジャーキーは添加物のしっかり入ったものとなっている」と話されました。
そのジャーキーは私も買わせていただき食べたことがあったので、原材料表示はしっかり記憶しています。
ここで提案させていただいたのが、無添加の和牛ベーコンでした。
興味を持っていただいたので、すぐにサンプルを送らせていただきました。さっそく食べたとメールがあり、
「これまで食べたことのない美味だった」とお褒め頂きました。
これは、われわれが作る和牛ベーコンへの評価であり、同時に今回訪問させていただいた「スモークハウス白南風(しらはえ)」の青木さんに対する賞賛であると思っています。

スモークハウス白南風(しらはえ)燻製職人の青木さん。
「木の命をいただく責任」燻製職人の青木さんのこだわり

白南風(しらはえ)の入り口を飾る看板
スモークハウス白南風では、燻製に“乾燥させたチップ”を使いません。
主にコナラ(広葉樹、どんぐりの実ができます)の木を使いますが、すべて生の木です。切ってすぐの木は水蒸気が多く、寝かせておくとまた違った燃え方をする。これを薪にして、あるいは丸太のまま、窯に焚いていきます。

燻製にはチップではなく広葉樹などの薪を使う。
「ちゃんとした香りの立つ木を使わないと」と、
針葉樹は一切使いません。また一般的によく使われる桜の木は、青木さんによるとアクが強いために最後の仕上げだけに使う場合が多いとのことです。
青木さんのお話
- チップ・・・不完全燃焼、木は完全に乾燥しているために死んでいる、手軽に香りを付けるための道具
- 薪・・・完全燃焼する、木はまだ生きている、火の操作が難しいがコントロールできれば発色もできる
青木さんのお話で印象深かったのは、「我々は、木を燃やすことで木の命をいただいている。その責任があるから、木を無駄にしてはいけない。」
これは、私も常々考えていますが、我々は動物の命を頂いて、収入を得て、命を繋いで、また美味しいもので生活を豊かに過ごすことができるようになっています。これは私の実家においても生まれたときから畜産を稼業としてきたので同様です。
川上から川下まで、食品を扱う人の心が大切で、それが食材に伝わり、食べる人に伝わっていくと考えています。
人の手を介して何重にも旨味を増していく肉とは

豚バラのフランクの部分。1頭からわずかしか取れない部分で、脂や薄い膜を丁寧に取り除き、白南風では豚のジャーキーを作っている。
川上である農家が手塩にかけて育てた牛肉を、我々肉屋が丁寧に心を込めてカットする、そのカットした肉を燻製屋が時間をかけて磨いていく。
加工品づくりは手間と時間とお金がかかることもあり、「そのまま食べたほうが良いのでは?」と言われることもありますが、
人の手を介して何重にも旨味を増していく肉があるなら、それは食べる人に強烈な印象を与えると考えます。
また、それを贈り物として誰かに食べてもらおうとすることは物凄く価値のあることだと確信するわけです。
『無添加 和牛ベーコン』は、2020年歳暮で、紀ノ国屋から販売されます。
執筆者:鳥飼